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縄文土器 十日町市博物館

雪国で出土、炎の造形美

国宝・笹山遺跡火焔型土器(指定番号1)高さ46.5センチ 小川忠博撮影
国宝・笹山遺跡火焔型土器(指定番号1)高さ46.5センチ 小川忠博撮影
国宝・笹山遺跡火焔型土器(指定番号1)高さ46.5センチ 小川忠博撮影 国宝・笹山遺跡王冠型土器(指定番号15)高さ27.2センチ 小川忠博撮影

 縄文時代に日本各地で作られた縄文土器。その造形や文様は、時期、地域によってさまざまです。約5千年前の縄文中期には立体的な装飾の土器が増えますが、中でも火焔型土器は、燃え上がる炎のような意匠が特徴。新潟県十日町市を含む信濃川流域から、集中して出土しています。

 1999年には、市内の笹山遺跡で出土した深鉢形土器57点と石器、土製品など計928点が国宝に指定されました。縄文土器としては初の国宝。当館はこれら全てを所蔵し、定期的に入れ替えて展示しています。

 この火焔型土器は、上半部がほぼ破損のない状態で発掘されました。鶏のトサカのような突起や表面の精緻な渦巻き文様、そして均整の取れたプロポーションなど、火焔型土器の代表といえます。

 愛称は「縄文雪炎」。国宝指定後に公募で名付けられました。火焔型土器の分布は多雪地帯と符合します。エネルギーみなぎる造形には、植物の芽吹きや待ちわびた春への喜びを感じます。

 王冠型土器も笹山遺跡から、火焔型土器とセットで発見されました。造形は似ていますが、王冠のようにうねる口縁部の装飾が目を引きます。いずれも内側におこげが付いた跡があるため、煮炊きに使用されたのでしょう。装飾の多さから、祭祀用だったと推測されています。

 なぜ過剰なまでの装飾が施されたのか。文様の意味とは。さまざまに想像を広げることができる謎の多さが魅力です。

(聞き手・木谷恵吏)


 《十日町市博物館》 新潟県十日町市西本町1の382の1(問い合わせは025・757・5531)。午前9時~午後5時。原則(月)休み。300円。2点は27日~12月1日に展示。12月2日から閉館し、来年6月に新博物館がオープン。

菅沼亘さん

学芸員 菅沼亘

 すがぬま・わたる 1992年から現職。専門は考古学。担当した主な企画展に「異形の縄文土器」「動物の意匠」。

(2019年7月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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