徳川11代将軍家斉や最後の将軍慶喜を輩出した一橋徳川家は、ゆかりが深い茨城県に約6千点の資料を寄贈しました。これらを所蔵する当館では、生き物をテーマにした企画展「いきもののかたち」を開催しています。約3分の1が重要文化財で、名品ぞろいです。
「喰瓜栗鼠図」(室町時代)は、リスがウリを食べている様子が描かれています。古くから動物には、子孫繁栄や延命息災など様々な意味が込められ、絵巻や掛け軸などのモチーフとされてきました。リスは子供をたくさん産む動物で、ウリも多くの実をつけることから、子孫繁栄への思いが込められています。
作者の山田道安は、室町末期に武士でありながら絵画に優れた武人画家。室町時代に描かれた絵は江戸期になると献上品として重宝され、この作品も一橋徳川家に贈られたものです。
ふたの上にのった獅子の愛嬌ある表情が可愛らしい「青磁獅子形鈕付香炉」は、室町時代に中国から日本に渡ってきたものとされています。香をたくと、獅子の口から煙が出てくる作りになっています。
獅子は高貴さを象徴する動物。青磁は足利将軍家の床の間の飾りに使用されるなど、陶磁の中でも価値が高いものでした。ただ、この香炉は釉薬が厚く塗られてしまっているため、高級感や威厳よりも親しみやすさを感じる雰囲気になっているのが特徴です。
このほか、馬やセミ、鶏など様々な動物を模した目貫などの刀装具も数多く展示しています。刀は江戸時代、武士が日頃身につけるものだったため、目貫は当時のおしゃれの一環で、生き物で個性を表現しました。同じ動物でも一つ一つが異なる表情をしているのが興味深いですよ。
美術品は難しいと感じる方もいると思いますが、まずは「顔が可愛い」「動作が面白い」と気楽に楽しんでもらえたらうれしいです。
(聞き手・大石裕美)
《茨城県立歴史館》 水戸市緑町2の1の15(☎029・225・4425)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始など休み。今企画展は6月7日(日)まで。390円。
学芸員 蔀政人 しどみ・まさと 茨城県出身、青山学院大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。2018年から同館勤務。専門は仏教美術。 |