11月22、23日に東京の神保町で開かれる韓国の本のお祭り「K-BOOKフェスティバル」に韓国から俳優のパク・ジョンミンがやってくる。
K-BOOKフェスティバルは文学からエッセイ、絵本など韓国の本をもっと楽しもうと2019年に始まった。コロナのためにオンライン開催となった年もあったが、今年で7回目を迎える。作家や翻訳家による韓国の本にまつわるトークが神保町の出版クラブビルで開かれるほか、本だけでなく韓国の雑貨やお餅の販売もある。
今年のテーマは「まじわる」。ジャンルの横断にチャレンジし、「文学と映画」をテーマにした関連イベントも開く。パク・ジョンミンが登壇するのは、23日に神保町シアターである「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」(イ・ジュニク監督、2016)の上映会。パク・ジョンミンが広く知られるきっかけとなった映画で、主人公の詩人尹東柱(ユン・ドンジュ)の従兄弟、宋夢奎(ソン・モンギュ)役を演じた。

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前日の22日には事前収録の独占インタビュー「初めまして、出版社MUZEの代表パク・ジョンミンです」が公開される。パク・ジョンミンは今年、俳優業を一時休養し、出版社MUZEの代表の仕事に専念してきた。韓国の出版界も日本と同様に「本が売れない」厳しい状況だが、パク・ジョンミンは特別なアプローチで奮闘し、今年の韓国出版界の救世主となった。
今年MUZEから出たキム・グミの小説「初夏、ワンジュ」はオーディオブックを前提につくられ、出版に先行してオーディオブックが公開された。しかも声の出演がヨム・ジョンアやコ・ミンシら主演級の俳優という豪華さで注目を浴びた。映画界の人脈を駆使し、友情出演してもらったという。もちろんパク・ジョンミンも出ている。
テレビの人気インタビュー番組に出演し、ソウル国際ブックフェアでは売り子として懸命に働く姿で話題に。自ら宣伝に奔走し、「初夏、ワンジュ」はベストセラーとなった。キム・グミはもともと売れっ子の作家ではあるが、代表のパク・ジョンミンいわく「このままいけば、キム・グミさんの本の中で一番売れた本になりそう」とのこと。

パク・ジョンミンがオーディオブックに力を入れるのには理由がある。父が視覚障がい者のため、本を読むことができないのだ。
今年はパク・ジョンミン主演、ヨン・サンホ監督の映画「顔」が韓国で公開されたが、パク・ジョンミンが演じたのは視覚障がい者の息子の役だった。監督はパク・ジョンミンの父が視覚障がい者と知らずにキャスティングしたという。年老いた視覚障がい者の役はクォン・ヘヒョが演じたが、若かりしころをパク・ジョンミンが息子役と一人二役で演じていた。インタビューではこの経験についても語った。
というのも、事前収録のインタビューは筆者が務め、映画俳優としてのこれまでの道のりと、出版社代表としての仕事について直接話を聞いた。俳優として長くいい仕事をしたいという思いも、いったん俳優業を離れて出版社の仕事に力を入れる理由だと感じた。「休養」というにはあまりに忙しそうではあったが、新たなエネルギーを吸収して、もうすぐ俳優業に復帰する。復帰作は12月にソウルで開幕する演劇「ライフ・オブ・パイ」だ。
K-BOOKフェスティバルの詳細は公式ホームページ(https://k-bookfes.com/)で。
成川彩(なりかわ・あや)
韓国在住文化系ライター。朝日新聞記者として9年間、文化を中心に取材。2017年からソウルの大学院へ留学し、韓国映画を学びつつ、日韓の様々なメディアで執筆。2023年「韓国映画・ドラマのなぜ?」(筑摩書房)を出版。新著にエッセー「映画に導かれて暮らす韓国——違いを見つめ、楽しむ50のエッセイ」(クオン)。2023年に鶴峰賞(日韓関係メディア賞)メディア報道部門大賞を受賞。
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