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街の十八番

大野屋總本店@新富町

歌舞伎を支える粋な足袋

登録有形文化財の店舗前に立つ福島茂雄さん
登録有形文化財の店舗前に立つ福島茂雄さん
登録有形文化財の店舗前に立つ福島茂雄さん 縫い目が肌に当たり痛くないよう1足ごとに木槌(きづち)でたたきなじませる。1足3564円~。誂えは初回5足からで1足700円増し

 江戸中期に三田で仕立屋として創業、1849年に移転し、足袋と和雑貨の専門店になった。

 7代目の福島茂雄さん(49)の祖父で5代目が考案した「新富形」と呼ばれる足袋は、底が細くつま先はふっくら。足がすっきりと細く見える粋な形だ。新富町は大正時代まで「新富座」という芝居小屋があった歌舞伎ゆかりの町。今も歌舞伎役者がお得意様だ。毎月の演目や役柄に合わせて白足袋や柄足袋、紐(ひも)で結ぶ紐足袋なども誂(あつら)える。足袋を留めるこはぜは一般的には4枚。こはぜが多いと布に高さが出て足を小さく見せるが、助六や奴(やっこ)の役は2枚と少なく足を力強く見せる。正座の多い役では普段より緩めに仕立てる。

 既製品もサイズが豊富で、自分の足に近いものを選べる。幅や甲の高さの異なる4型があり「細」「柳」「梅」「牡丹(ぼたん)」と名付けている。足袋は1階と2階で作られ、裁断やミシンでの縫製、仕上げまでを家族を含めた10人が手がける。「今、お誂えで足袋を作る所も少なくなってきているのか、遠方からのお客様も多いですね」

(文・写真 清水真穂実)


 ◆東京都中央区新富2の2の1(TEL03・3551・0896)。午前9時~午後5時。(土)(日)(祝)休み。新富町駅。

(2017年8月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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