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街の十八番

浪花家総本店@麻布十番

日本のたい焼きの「元祖」

神戸将守さん。小粋な柄の手拭いと丸ぶち眼鏡が、ニッコリ笑顔によく似合う
神戸将守さん。小粋な柄の手拭いと丸ぶち眼鏡が、ニッコリ笑顔によく似合う
神戸将守さん。小粋な柄の手拭いと丸ぶち眼鏡が、ニッコリ笑顔によく似合う 焼き場には10丁の型が並び、一つ約30秒で焼く。たい焼きは1個180円

 麻布十番商店街の中ほどにある、赤いのれんと年季の入った木看板が目印の「浪花家総本店」。創業は1909(明治42)年。たい焼きの「元祖」といわれ、地方や海外から訪れる客も多い。

 創業者は、現在4代目として店を守る神戸将守(かんべまさもり)さん(60)の大伯父。故郷の大阪にちなみ「浪花家」と名付け、面白い形の今川焼きを売り出したのがルーツとなった。なぜ鯛(たい)の形だけが残ったのか尋ねると「鯛は昔から縁起物。やっぱり皆さん召し上がりタイ、でしょう?」と神戸さん。25歳から先代を手伝い、毎日1千個を年間300日、3年間焼き続けて、徐々に感覚をつかんだという。

 パリッとした薄皮のたい焼きは一つ一つ型を使って焼きあげる。商売道具の型は、木型と鉄型、持ち手、それぞれを職人に特注。今使っている型は30年ものだ。店奥の大釜では、1日約150キロのあんこを炊く。厳選した北海道産の小豆を使用し、たい焼きと相性良く仕上げる。保存料など余計なものは入れない。体にも心にも染み入り、また帰ってきたくなる味だ。

(文・写真 笹木菜々子)


 ◆東京都港区麻布十番1の8の14(TEL03・3583・4975)。午前11時~午後7時。(火)と第3(水)休み。麻布十番駅。

(2017年9月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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