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街の十八番

白木屋傳(でん)兵衛@京橋

10年先を見据える箒作り

店内に立つ中村悟さん
店内に立つ中村悟さん
店内に立つ中村悟さん 装飾を省き、軽さと掃きやすさを追求した編み方。麻糸で束ねた部分を「玉」、端の幅が広い部分を「耳」という。江戸箒は8640円から

 白木屋傳兵衛は、1830(天保元)年に銀座で創業。その後京橋に移転し、現在まで「江戸箒(ほうき)」を作り続ける。

 江戸中期、庶民の長屋に畳が普及し始め、それまで主流だった板の間向きの棕櫚(しゅろ)箒に加え、畳目が掃きやすい草の箒が広まった。水売りから箒屋にくら替えした初代は、独自に草の編み方と、草を柔らかさや弾力で選別し「上」「特上」「極上」の3等級の箒を制作する体系を考案。現在も、抱えの職人が同工程を踏んで手編みした箒だけを江戸箒と呼び、品質を守っている。

 材料のホウキモロコシは、国内生産者の激減で、今はほとんどを輸入に頼る。だが国内生産を絶やさないため、現在の茨城県つくば市の畑に加え、来年から山形県東根市の生産者にも作ってもらう予定だ。「質を保っていくために、10年先を見据えている」と7代目の中村悟さん(58)は語る。

 環境意識の高まりからか、最近は箒を使ったことがない「家電世代」の客も増えている。「店頭で試し掃きして、自分に合う一本を見つけてほしい」

(文・写真 安達麻里子)


 ◆東京都中央区京橋3の9の8(TEL03・3563・1771)。午前10時~午後7時。(日)(祝)休み。宝町駅。

(2018年1月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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