ひとえきがたり

大館駅(秋田県、JR奥羽線ほか)

ハチはここから旅立った

くるりと尾を巻いたハチの首に慰霊の花輪をかける=秋田県大館市御成町

くるりと尾を巻いたハチの首に慰霊の花輪をかける=秋田県大館市御成町

  • くるりと尾を巻いたハチの首に慰霊の花輪をかける=秋田県大館市御成町
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 待ち合わせでおなじみの東京・渋谷駅前のハチ公像。しかしここ秋田・大館駅の像の周りに喧騒(けんそう)はなく、のどかな駅前に広い空が広がる。渋谷とは違い、耳の立った若い姿で駅を見つめるハチに、じっと主人を待つ姿が重なる。

 秋田県大館市は秋田犬(あきたいぬ)の主産地。忠犬ハチ公のふるさとだ。純系の日本犬を探していた東京帝大教授、上野英三郎のために教え子が手配し、1924年1月、大館駅から列車で東京へ送られた。

 駅前の像は2代目。渋谷駅に銅像ができることを知った地元有志が35年に初代を建てたが、太平洋戦争中の金属供出で渋谷駅の像とともに姿を消した。市民の強い思いから大館駅前に再びお目見えしたのは、約40年経った87年のこと。

 「銅像を見るとちょっと鼻が高いっていうんだべか」。ハチ公生家の斎藤良作さん(66)は照れ笑いを浮かべた。ハチを仲介した人から斎藤家に届いた手紙が残っている。生後50日ほどのハチが、雪の中を背負われて駅に向かったこと、車掌に輸送中の食料を十分に頼んで送ったこと……当時の様子がつづられる。

 「秋田犬はハチ公が象徴するように人間の愛情をとても大事に思うんです」と秋田犬保存会会長の富樫安民さん(70)。月命日の4月8日に像の前で同会らが毎年慰霊祭を行い、没後80年の今年も市民約30人が集まった。夕暮れのなか、ろうそくが灯(とも)された。ハチの横顔に穏やかな表情が浮かんで見えた。

文 中村さやか撮影 伊ケ崎忍 

 興味津々  

 JR大館駅は、青森駅(青森市)と福島駅(福島市)を結ぶ奥羽線の沿線駅で、好摩駅(盛岡市)を始点とする花輪線の終着駅。

 1899年の大館駅開業と同時に駅構内で弁当販売を始めた花善(TEL0186・43・0870)は現在、駅前で名物の鶏めし弁当(880円)を売る。戦後の物資不足の中、配給の砂糖、しょう油、ゴボウ、米をまとめて炊いたのが原型。老犬神社へは沢尻駅(花輪線)から徒歩30分。その昔、猟師である主人の命を救おうとしたが、果たせずに死んだ「忠犬シロ」を供養する。

 

興味津々
ハチ公神社

 JR大館駅には別のハチ公像も。1989年にホームに置かれたハチ公神社に現在鎮座するのは、きりっとした顔つきの2代目。曲げわっぱでできたさい銭箱にお金を入れると「ワン、ワン」と鳴き声が響く。

(2015年4月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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