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ひとえきがたり

女川駅(宮城県、JR石巻線)

被災地照らす 復興のシンボル

復興工事が進む夕刻の女川町に駅の明かりがともる。海まではわずか300メートルだ=宮城県女川町女川浜
復興工事が進む夕刻の女川町に駅の明かりがともる。海まではわずか300メートルだ=宮城県女川町女川浜
復興工事が進む夕刻の女川町に駅の明かりがともる。海まではわずか300メートルだ=宮城県女川町女川浜 地図

 ウミネコが翼を広げたような屋根をもつ3階建ての新駅舎が、東日本大震災の被災地・女川町の海を望んで立っている。開業は、JR石巻線が4年ぶりに全線開通した3月21日。町は「まちびらき」と位置づけ、式典を催した。しかし、復興はまだ緒についたばかりだ。駅周辺では最大15メートルの土地のかさ上げなど造成工事が続き、ダンプカーが砂埃(すなぼこり)を上げて走り回っている。

 2011年3月の震災時、駅舎は約15メートルの津波に襲われ、列車とともに流された。線路はがれきで埋まった。町の3千棟以上の家屋が全半壊し、町人口の8%にあたる827人が亡くなった。その半年後、町は女川駅を中心に商業、観光施設を整備する復興計画を策定。約8億5千万円の費用をかけ、旧駅舎から約200メートル内陸に新駅舎をつくった。

 仙台市出身の小松洋介さん(33)は新駅舎開業直後に、駅前に住民と町外からの観光客、ボランティアなどが集まる交流施設「Camass(カマス)」をオープンさせた。ウッドデッキ付きのモダンな平屋建てだ。小松さんは震災後、勤めていた会社を辞め、女川町を拠点にするNPO法人「アスヘノキボウ」を設立し、地域活性化に取り組んでいる。「復興には10年、20年かかる。若い世代が責任を持って次の世代にバトンを渡せるように、長い時間をかけて関わっていきたいです」

 駅前にはテナント型商店街の建設も進んでいる。運営する町づくり会社「女川みらい創造」の近江弘一専務(57)は「女川は大都市・仙台と鉄道でつながっている。町外から多くの人が訪れてくれれば」と期待を寄せる。6棟にスーパーや飲食店など27店舗が入り、12月に開業予定だ。新駅舎を中心に少しずつにぎわいを取り戻しつつある。

文 永井美帆撮影 伊ケ崎忍 

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 JR石巻線は小牛田駅(宮城県美里町)と女川駅(女川町)を結ぶ44.7キロ。

 6月、女川駅前にオープンしたあがいんステーションは、旧女川駅舎の外観を模した水産業体験施設。ホタテやホヤ、カキなどの水揚げ、出荷準備作業が体験できるほか、水産加工品の販売なども。午前10時~午後5時。(月)休み。問い合わせは復幸まちづくり女川合同会社(0225・98・7839)。

 駅から徒歩約20分に被災した4旅館が共同運営するホテル・エルファロ 女川トレーラーハウス宿泊村(TEL0225・98・8703)がある。ベッドやユニットバスを完備したトレーラー40台が並ぶ。1人1室6500円(朝食付き)。

 

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女川温泉ゆぽっぽ

 女川駅舎には女川温泉ゆぽっぽ(TEL0225・50・2683)が入っている。浴室の壁には日本画家・千住博氏が原画を描いた富士山や水辺に集う鹿のタイル画がある。3階には展望デッキも。500円、6~11歳300円。午前9時~午後9時。第3(水)休み。

(2015年9月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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