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ひとえきがたり

津軽五所川原駅
(青森県、津軽鉄道)

米・卵…農高生が自慢の商品

売店に立つ五農の生徒たちと津軽半島を訪れた観光客の会話が弾む
売店に立つ五農の生徒たちと津軽半島を訪れた観光客の会話が弾む
売店に立つ五農の生徒たちと津軽半島を訪れた観光客の会話が弾む 津軽五所川原駅

 「ただいま五農の売店、営業中です」「みそドーナツ、おいしいですよ」。列車を降りた乗客たちに向かって、若い男性4人が声を張り上げた。「街づくり五農農業会社」の〝社員〟たち。実は県立五所川原農林高校(五農)の生徒だ。

 駅舎の中に売店がオープンしたのは3年前。空いている駅売店を生徒に使わせてみないかと津軽鉄道に持ちかけられた佐藤晋也校長(59)が、「自分たちが作った商品を売って、お金を稼ぐ経験をさせたい」と引き受けた。

 授業で作った米やジャム、雑貨など約10種類を売る。生徒が交代で1日1時間ほど販売実習に立つ。「どちらに住んでいるんですか」。おずおずと、でも積極的に列車を待つ乗客に声をかける。

 一番人気の商品は「五農赤たまご」だ。生徒と売店を切り盛りする駅員の佐川里江さん(40)は「これを食べるとほかの卵が食べられないって、地元のおばあちゃんたちが買いにくるんですよ」。

 隣町の特産ブドウを使った「酢チューベンドリンク酢」は、テレビでも紹介され、半年で6千個を売り上げた。今年3月に卒業した對馬(つしま)裕さん(18)は味の調合を担当。「舌がおかしくなるくらい、試験管で毎日飲み続けました」

 生徒たちの「直球の営業」に根負けしたと、30代の男性がドリンク酢を手に取った。札幌から沖縄まで自転車の旅の途中という。「結構酢が強いね」。一口飲んで爽快そうな顔をした。

文 山田絵理佳撮影 上田頴人 

沿線ぶらり

 津軽鉄道はJR五能線五所川原駅に隣接する津軽五所川原駅(青森県五所川原市)と津軽中里駅(中泊町)を結ぶ20.7キロ。8月末まで、風鈴をつるし俳句の短冊を下げた「風鈴列車」が運行中。

 津軽三味線会館(TEL0173・54・1616)は金木駅から徒歩7分。津軽三味線の歴史を学べるほか、生演奏を聞くことができる。500円。

 津軽中里駅から車で約20分の十三湖に浮かぶ中の島ブリッジパーク(TEL0173・62・2775)では、10月上旬までシジミ拾い(袋1枚300円)を体験できる。

 

 興味津々
 
 

 街づくり五農農業会社のみそドーナツ(1個160円)は、授業で作ったみそを使った焼きドーナツ。津軽鉄道や地元の菓子店と共同開発。味は生徒たちが決め、パッケージも制作した。売店の開店時間は午前9時半~午後5時。(日)休み。

(2014年7月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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