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建モノがたり

MIKIMOTO Ginza2(東京都中央区)

窓だらけ 実は力強い建築

窓の数は160超。夜は幻想的な雰囲気に
窓の数は160超。夜は幻想的な雰囲気に
窓の数は160超。夜は幻想的な雰囲気に 内部のらせん階段。真珠の首飾りがモチーフの照明は橋本夕紀夫さんがデザイン=いずれも外山俊樹撮影

ピンク色の壁全体にちりばめられた、不思議な形の窓。9階建てのビルなのに、ひょっとして柱がない?

 ハイブランドの店舗や飲食店が立ち並ぶ銀座。2丁目のマロニエ通りに、チーズの穴のような窓が無数に並んだ建物がある。総合宝飾店「ミキモト」の店舗ビルだ。近づいてみると、窓の形や配置は不規則で、複数階にまたがる窓も。内部には柱が一本も見当たらない。一体どんな構造なんだろう。

 「銀座の建築は洗練されているが、僕は力強い建築を造りたかった」と振り返るのは、設計者の建築家・伊東豊雄さん。商業ビルは一般的に、柱や床などに、外壁のパネルやガラスを取り付けたような造りだ。しかし伊東さんはそれらを一体化することで力強さを表そうと考えた。採用したのは「鋼板コンクリート構造」。厚さ6~12ミリの鋼板2枚の隙間20センチにコンクリートを注入した構造体が、壁と柱の役割を担う。「夜中に鋼板を運び、つり上げて溶接し、コンクリートを流し込む。大変な作業でしたね」

 窓にも意味がある。横風など横から受ける力が壁をつたって斜め下に流れるように計算し、形や配置を決めた。

 ミキモトは1893年、世界で初めて真珠養殖に成功。国内外に100店舗以上を持ち、高級ブランドで知られるが、「この店舗は若い人も入りやすい」と同社の広報担当者。ビルの外壁に施した薄ピンク色のパール塗装は、身につける人の美しさを引き出す真珠の輝きを表している。

(笹木菜々子)

 DATA

  設計:伊東豊雄建築設計事務所+大成建設一級建築士事務所
  構造:ラ地上9階、地下1階
  用途:商業ビル
  完成:2005年11月

 《最寄り駅》 銀座


建モノがたり

 MIKIMOTO Ginza2から徒歩1分。煉瓦亭(問い合わせは03・3561・3882)は、創業1895年の老舗洋食店。日本の洋食の礎を築いた。4代目店主の木田浩一朗さんのおすすめは、「元祖ポークカツレツ」(2000円)。

(2020年3月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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