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建モノがたり

宇都宮大学オプティクス教育研究センター(宇都宮市)

風が鳴らす 光のシンフォニー

鏡面仕上げが施されたステンレスプレートは、桜や新緑など、キャンパスの四季を映し込む
鏡面仕上げが施されたステンレスプレートは、桜や新緑など、キャンパスの四季を映し込む
鏡面仕上げが施されたステンレスプレートは、桜や新緑など、キャンパスの四季を映し込む エントランスの内部から見た壁面装飾

光学の研究施設に求められた、象徴的な外観。一体どのように「光」を表現した?

 宇都宮大学オプティクス教育研究センターの壁面は絶え間なく表情を変える。95ミリ四方のステンレスプレート3万枚が風に揺れ、水面に波紋が広がるように、鳥の群れが飛び立つように。

 日本で唯一、光学技術に特化した教育研究施設。「海外の施設に見られるような、シンボリックな建物を」という大学側の希望に、建築家の山本理顕さん(75)が応えた。

 「光の研究所にふさわしく、風によって光が反射する建物にしたかった」と山本さん。中古車販売店で目にしていた、横一列にはためく連続旗の装飾を思い出した。壁面から14センチほど離して縦横に張ったワイヤの横軸に、軽量なステンレスプレートの上辺のみをひっかけ、市松模様に配置。「想像以上に面白いものができた」と振り返る。

 「この装飾はまさに光学」と感心する同センターの早崎芳夫教授(54)は、学会での発表を建物のスライド映写から始める。「縦17×横32メートルの、恐らく世界最大の空間光(ひかり)変調器だと冗談交じりに紹介すると、国内外の研究者にすごくうける」と笑う。光の変調とは、専門用語で光の調子を変えること。施設を知ってもらえるのはもちろん、自身の研究内容を説明する導入として、最適なのだという。
 「動力は電気ではなくクリーンなそよ風」という早崎教授の話を思い返しつつ、再び壁面を眺めた。プレートたちがかすかに、硬質な音を立てた。

(中村さやか、写真も)

 DATA

  設計:山本理顕設計工場
  階数:地上4階
  用途:大学
  完成:2009年10月

 《最寄り駅》 宇都宮駅からバス
 ※新型コロナウイルスの影響で入構制限中


建モノがたり

 宇都宮駅の駅ビル・パセオ2階に入る来らっせ パセオ店(問い合わせは028・650・5352)は、ぎょうざの土産専門店。冷凍ぎょうざを中心に、宇都宮餃子会に加盟する30店以上の商品がずらりと並ぶ。ぎょうざ形ポーチなどのグッズも販売。午前8時~午後9時。

(2020年9月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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