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建モノがたり

ナインアワーズ赤坂・スリープラボ(東京都港区)

街に投げ出された カプセル

カプセル内の明かりが照らすフロア。ロールスクリーンが下ろされたカプセルは就寝中とわかる。この夜午前2時ごろにはほぼ満室となった

 

  都市部に近年増えているカプセルホテル。デザインにこだわり、客層も昔とは変わっているというが。

 繁華街に近い細長い土地に立つカプセルホテル「ナインアワーズ赤坂・スリープラボ」。設計した平田晃久さん(52)が最初に考えたのは、カプセルが「街に投げ出された」イメージだった。「食べたりくつろいだりは都市の他の場所に委ね、ただ寝るためだけに存在する。それをそのまま建築にできないかと」

 カプセルは「大都市の小さなすき間にも入り込む、アメーバのように自由自在な存在」とも話す。そんな特徴を生かして、各ユニットの四隅に内蔵した細い鉄骨柱が建物を支える構造が実現した。

 8月上旬の会社帰りに1泊してみた。フロアには、黒い巨大なサイコロのようなユニットが8~12個点在する。1ユニットは、細長い直方体のカプセルを2個×2段重ね、上段を90度回転させた4個のカプセルで構成されている。

 カプセル内はシングルベッドよりやや大きく、仰向けで手を上げても天井には届かない。枕元には照明、調光器、コンセント、USB端子。入り口のロールスクリーンを下ろすと外とは遮断され、繭の中にいるようだ。一方、カプセルの外に出れば大きなガラス窓から周囲が見渡せ、街をすぐ近くに感じる。

 安さが魅力のカプセルホテルだが、運営会社の米本秀高さん(37)は「外国人の方にとっては観光の目的地のようになっています」。記者の隣のカプセルにいたドイツ人旅行者アンさん(31)は、「多くを持たない日本のミニマリズムが好き」と話す。ネットで動画を見て「ワクワクして」1人で泊まったという。確かにカプセルに入る時は、宇宙船のアトラクションにでも乗り込む気がする

 カプセルにはセンサーやマイクが装備され、希望すれば寝返りや呼吸、いびきなどの測定結果が後日メールで届く。非日常を楽しんだり、健康管理に役立てたり。カプセルホテルは寝るためだけの場所ではないようだ。

(島貫柚子、写真も)

 DATA

  設計:平田晃久建築設計事務所
  階数:地下1階地上4階
  用途:ホテル
  完成:2018年

 《最寄り》赤坂


建モノがたり

 徒歩4分のサウナ東京(☎03・5544・8478)は、4月にオープンした男性専用サウナ。フィンランド直輸入の木材「ケロ」を使ったサウナなど5種類があり、水温の異なる3種類の水風呂も。午前11時~翌午前9時((土)(日)(祝)は午前9時半から)。

(2023年9月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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