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果実が主役 食べ比べできる「いちご大福」

「Chef'sMarche(シェフズマルシェ)」いちご大福

Chef's Marche 店頭

 

 「果実が主役のいちご大福」。そのこだわりを形にしているのが、東京・学芸大学駅の高架下に店を構える「Chef's Marche(シェフズマルシェ)」です。モダンな造りと昔ながらの商店街の空気が混ざり合う注目のエリア「学大高架下」で、新鮮な果物や旬の野菜をそろえ、食の楽しさを提案しています。  

 

料理人が包丁を置き、土にまみれた日々

 2018年にオープンした「Chef's Marche」を運営するのは、株式会社アンシェフ。代表の結城飛鳥さん(34)は、大学で法律を学びながら将来は商社マンとして世界を股にかけることを夢見ていました。

 しかし、いざ内定を手にすると異なる感情が芽生えたといいます。「完成された大きな組織よりも、ゼロから価値を創り出すほうが性に合っている」。その思いが勝り、飲食ベンチャーに飛び込みました。

 入社2年目にはカンボジアの店舗を任され成果を上げるなど順調にキャリアを積んでいましたが、やがて独立を決意します。「長く食に携わるなら、素材そのものを深く理解しなければ、本当の価値は提供できないのではないか」

アンシェフ代表 結城飛鳥さん

「アンシェフ」代表の結城飛鳥さん

 そう考えた結城さんは、20代半ばで、仲間の料理人7人とともに農業の世界に飛び込みました。野菜の種まきから収穫まで一連の作業を自ら経験しつつ、従業員が無理なく働き続けられる環境を整えて会社を設立しました。「若さもあり、新しい挑戦への不安はありませんでした」と振り返ります。

農家の息子として 農業を特別視せず対等な敬意を

 結城さんは長野の大規模農家に生まれました。四人兄弟の末っ子として幼い頃から農業の厳しさを見て育ちましたが、「農家さん」という呼び方には違和感があったといいます。親しみをこめた言い方だと理解しつつも、世間に根強い「農家=大変、守るべき存在」という一方的な同情や特別視にどこか引っかかりを覚えていたのです。

「農業も、料理人やエンジニアと同じプロフェッショナルな仕事です。こだわる人もいれば、そうでない人もいる。素晴らしいものを作っているなら正当な評価がされるべきだと思っています」

 現在、スタッフは毎朝全国の天気と気温を確認することから一日が始まります。農業の現場を経験しているからこそ、ブランドや品種にとらわれず、その日に最も状態の良い産地を見極めるためです。

「品種が同じ」でも、生産者が違えば味は別物

 店頭には、シーズン中であれば10〜15種類の鮮やかなイチゴが並びます。日本には現在300種以上が流通し、埼玉県の「あまりん」や「べにたま」など新星もあらわれ、新しい品種が次々と登場。練乳なしでも十分な甘みを感じられる品種が増え、イチゴの世界は年々進化を続けています。

 しかし結城さんが重視するのは「品種名」だけではありません。それ以上に「誰が作ったか」だといいます。「例えば、同じ『あまおう』でも、生産者が違えば味は別物になります」と結城さんは断言します。

 光合成をいかに促進させるか、根の周りの水分をどう管理するか、夜間の温度を何度に保つか。それら膨大な栽培技術の積み重ねが、果肉の緻密さや香りの輪郭を決めるからです。

色とりどりの野菜や果物

色とりどりの果物や野菜が並び、柑橘類も多種多様 飲食スペースも

 接客においても、まずは「酸味の好き嫌い」や「果肉の硬さ」という好みを問いかけます。「お子様には酸味が穏やかな『やよいひめ』を、イチゴらしい甘酸っぱさを求めるなら『とちおとめ』を」。そこには、その品種の持ち味を最大限に引き出した生産者への信頼があります。

市場での「東京の父親」との出会い

 この圧倒的なクオリティーの仕入れを支えているのが、日本最大の青果市場、大田市場の仲卸「三木フーズ」の社長・三木雅一さんです。50年以上イチゴ一筋で歩んできた、業界屈指の目利きとして知られます。

 独立当初、結城さんは市場の洗礼を受けたといいます。新参者には、思うような品物が回ってこない。時には割高な買い物を強いられることもありました。そんな閉塞感を打ち破るため、周囲が恐れる三木さんのもとへ、交渉に向かいました。「最初は本当に怖かった」と結城さんは苦笑します。

 三木さんは愛想よく迎え入れるタイプではありませんでしたが、相手が若かろうがなんだろうが関係なく、対等に向き合ってくれました。大手だろうが個人だろうが、適正価格で最高の品を渡してくれる。その公平さと人柄に救われました。

 今では「東京の父親」と慕うほどの間柄。単なる売買の関係ではありません。試験栽培中の希少な品種を託され、店で顧客の反応をフィードバックする。その声が三木さんを通じて生産者へ戻り、翌年の土作りに反映されます。「八百屋・仲卸・生産者」が三位一体となった循環。その一端を担えることに、結城さんは手応えを感じています。

八百屋が作る、イチゴが主役の「いちご大福」

 青果は、品種だけでなく生産者によっても味が変わる——それを象徴するのが、この「いちご大福」です。この商品の最大の目的は、「イチゴの食べ比べをしてもらうこと」。主役は果実で、品種ごとの味の違いをスイーツの個性として表現します。

いちご大福の製造

イチゴの個性にあわせて求肥をまとわせる

 目指したのは「イチゴと餅が、口の中から同時に消える」食感です。餅を最後にのみこむのではなく、同時にとろけて一緒にのどを滑り落ちる一体感。そのために、皮にはなめらかな求肥を使い、できるだけ薄く仕上げました。あんは脇役に徹し、甘さをおさえクセのない味に整えました。

いちごの断面

 

 面白いのは、すべての大福の形が不揃いなことです。「決まった型にイチゴを押し込むのではなく、イチゴの個性に求肥を添わせます」。果実の水分量や形を見て、料理人が一点ずつ微調整を加えます。

 品種名入りのラッピングも愛らしく、手土産にしても世代を問わず喜ばれそうです。料理人の技術は、素材を覆い隠すためではなく、引き立てるために使う——その姿勢はゆるぎません。

将来の展望

 

 結城さんは、「日本のイチゴは、いまや海外でも評価が高い。だからこそ、その価値をきちんと伝えたい」と話します。トマト専門ECサイト「トマ人(とまじん)」の運営や、果実を生かした新たなスイーツの開発にも取り組むなど、「農家×八百屋×料理人」という視点で食の可能性を広げ続けています。青果を「イチゴ」「トマト」とひと括りにしない——その思いが、食通も集まる街の食卓に静かに、そして確実に広がっています。

 


 

Chef's Marche

野菜と果物、それを生かした料理とスイーツ、総菜などを販売。カフェや、飲食スペースもある食の融合店舗。「その日に必要な分の野菜を、一番おいしい状態で食べていただく」 をコンセプトに、その日の一番のものを仕入れて販売。旬の果実を贅沢に使った「フルーツポンチ」も人気商品です。

ショップ詳細はこちら

Access:
東京都目黒区鷹番3丁目2番1号
(東急東横線「学芸大学駅」から徒歩3分)
 

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応募締切:2026年3月10日 16時

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