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アートリップ

ネガティヴマウンド 
CINQ(サンク)作(札幌市南区)

軟石が生み出す新風景

日没~午後9時は山側がライトアップされる=野口隆史撮影
日没~午後9時は山側がライトアップされる=野口隆史撮影
日没~午後9時は山側がライトアップされる=野口隆史撮影 「エントランスゾーン」にある「スパイラルスプリング」。夏は水遊びする子どもたちでにぎわう=野口隆史撮影

 真駒内から車で南に向かうとグレーの山肌が見えてくる。ふもとにある公園・石山緑地を歩いていくと、古代遺跡のような石の空間が広がった。彫刻家集団CINQが手がけた「ネガティヴマウンド」。ここはかつて、札幌軟石を切り出した場所だ。

 札幌市内で目を引く石造りの古い洋館や蔵の素材はこの軟石だ。約4万年前に支笏湖(しこつこ)周辺の噴火でできた溶結凝灰岩。加工しやすく保温性や耐火性に優れる反面、水に弱く割れやすい。

 明治初期から採掘され、大正~昭和の最盛期には石山地区に石材店が100軒超、石工が300人もいたという。しかし戦後は、強度の問題やコンクリートの普及で需要が減少、公害もあり採掘は中止に。跡地は公園になり、四つのアート作品が配置された。CINQのメンバーの國松明日香さん(71)は、「産業遺産として切り出した跡は残しながら、それを生かして新たな風景を作ることをコンセプトにしました」と話す。

 中でも、軟石に囲まれた「ネガティヴマウンド」は圧巻だ。岩山の形をそのまま地中に掘り込んで表現した。野外舞台として様々なイベントも開かれる公園のシンボルだ。やわらかな質感で建物の装飾材やオブジェとして再び注目されている札幌軟石。この場所はその歴史の原点だ。國松さんは「軟石のある、自然の風景と対話してもらえたら」とほほえんだ。

(石井久美子)

 石山緑地

 軟石採掘時の騒音や粉じんが問題となり、1977年に採掘を中止した跡地を、札幌市が整備した公園。南ブロック7.9ヘクタールは國松明日香、永野光一、松隈康夫、丸山隆、山谷圭司によるCINQがアートプロジェクトを企画し、97年にオープンした。「エントランスゾーン」「沈黙の森&赤い空の箱」「ネガティヴマウンド」「午後の丘」の四つのゾーンからなる。街灯や柵など園内の造形物も制作した。

 《アクセス》真駒内駅からバス約10分。


ぶらり発見

かおるいえ

 毎年8月末には、ネガティヴマウンドで約3000個のキャンドルをともす、いしやまキャンドルナイトを開催。今年は25日を予定している。問い合わせは石山地区まちづくり協議会(011・591・8734)。

 石山緑地から徒歩15分。札幌軟石のグッズを制作、販売する軟石や(TEL090・9425・0573)では、家の形のオブジェ「かおるいえ」(800円~)が人気。側面にアロマオイルをしみこませれば、軟石の保水性により香りが持続する。屋根の部分には、市が選定した「札幌の景観色」が塗られている。

(2018年7月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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