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アートリップ

ドラゴン21 
釜戸町のみなさん作(岐阜県瑞浪(みずなみ)市)

老若男女 手がけた「宝物」

大きな卵は陶片が組み合わさっている=松谷常弘撮影
大きな卵は陶片が組み合わさっている=松谷常弘撮影
大きな卵は陶片が組み合わさっている=松谷常弘撮影 人が入れる内部には、完成当時に作った卵と、2015年に園児が絵付けした卵が並ぶ=松谷常弘撮影

 渓流の瀬音と木々の緑が気持ちいい。大小七つの滝が続く、岐阜県瑞浪市釜戸町の渓谷「竜吟峡(りゅうぎんきょう)」。ふもとまで下りると、2匹の竜をモチーフにした高さ7メートルのモニュメントが立っている。日照りが続いた夏、滝つぼから雄竜と雌竜が天に昇り、恵みの雨を降らしたという昔話にちなんだ「ドラゴン21」だ。

 竜の頭や足元の青い鱗(うろこ)――。よく見るとすべて陶片だ。多治見や土岐と並ぶ美濃焼の生産地である瑞浪市。ドラゴンは「陶器の町」の象徴でもあるのだ。

 モニュメントは、同市窯業(ようぎょう)技術研究所が釜戸町まちづくり推進協議会に呼びかけ、2000年に制作を開始。地元の造形作家などが集まり、「大きな卵から飛び出す竜」のデザインを決定した。同協議会が「一家族で一人は参加しよう」と旗を振り、のべ2千人余りが関わったという。鱗や内部に設置する小さな卵はシニア世代が指導し、小中学生が粘土をこねて成形した。外側の大きな卵は陶板を組み合わせたもの。陶板一つ一つを固定したボルトは、保育園児が作った「トゲ」で隠した。01年3月、クレーンで竜の頭を卵にのせ、作品が完成した。

 鱗に目を落とすと、参加者が手書きした名前がくっきり読める。「名古屋に暮らす娘の名もある」と地元の木工作家の山本修さん(65)。「子どもたちにとっては釜戸にある宝物ですよね」

(井上優子)

 瑞浪市釜戸町

 岐阜県東濃地域西部で作られる焼き物「美濃焼」。産地のひとつが瑞浪市だ。釜戸町はその東端に位置し、人口約3千人。「ドラゴン21」の陶片焼成で窯貸しに協力したタイル工場がある。同町で江戸時代に鉱脈が発見された「釜戸長石」は、釉薬(ゆうやく)原料として国内外の陶器生産者が利用。1982年に閉山したが、現在も丸昭釜戸鉱業協同組合が同品質の「釜戸長石」を製造している。

 《作品へのアクセス》釜戸駅から徒歩12分。


ぶらり発見

瑞浪ボーノポーク豚まぶし

 「竜吟峡」は約700メートルの渓谷。竜伝説が残る一の滝、二の滝の他、岩の間を蛇行する昇竜の滝など変化に富む。一の滝のすぐそばの瑞浪市自然ふれあい館(TEL0572・63・0015)で休憩もできる。午前9時~午後5時。(月)((祝)(休)の場合は翌日)と12月26日休み。

 ドラゴン21から車で2分。みわ屋本店(TEL68・3388)は飛騨牛が名物だが、地元産豚肉をタレでつけ焼きした「瑞浪ボーノポーク豚まぶし」(写真、1250円)もオススメ。午前11時~午後2時半、5時~8時ラストオーダー。(火)と第3(月)休み。

(2018年11月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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