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アートリップ

希望
武田双雲作(東京都渋谷区)

地下に広がる無限の宇宙

希望 武田双雲作(東京都渋谷区)

 黒々とした墨の飛沫がみずみずしい。墨痕淋漓とはこのことか。まるで今、その場で描いたばかりのような臨場感だ。

 本作は、高さ2・7メートル、幅10メートルの書道アート。東京メトロ明治神宮前駅の千代田線と副都心線の改札口を結ぶ連絡通路の途中の壁面にある。2008年の副都心線開業時、池袋から渋谷駅間までの8駅に設置された14作のパブリックアートのうちの一つだ。

 作者は書道家の武田双雲さん(44)。希望という漢字を解体し、全ての点と線を恒星と惑星、原子核と電子に見立てて再構成しているという。「昔から、相対性理論や量子力学のマクロとミクロの世界観が大好き。壮大な観点から見れば悩みなんてちっぽけなもの。地下鉄駅を行き交う人たちを、あったかい希望の灯火で癒やしたかった」と語る。

 「地下鉄特有の閉塞感を緩和し、お客様にゆとりと潤いを感じてほしい」と話すのは、当時設置に関わったメトロ開発の保坂力さん(52)。素材の陶板タイルは、墨の滴りやかすれを表現するために何回も焼き直しをしたという。

 毎日アートを見ているという駅務係の佐藤なつみさん(23)に記者が本作の世界観を伝えると、「いつも不思議に思っていましたが、書かれていたのは希望という字だったんですね。なんだか力をもらえる気がします」。地下通路の一角に広がる「宇宙空間」にはゆったりとした時間が流れていた。

(小松麻美)

 明治神宮前駅

 東京メトロ千代田線、副都心線の2線が通る。1日の乗降人員は約10万人(2017年度)。洋画家・野見山暁治のステンドグラス作品もある。


ぶらり発見

「冷やしアイスクリームぜんざい 本日の煎茶セット」(写真、1404円) 明治神宮前駅から徒歩5分。日本茶ソムリエが選んだ煎茶を提供する表参道茶茶の間(問い合わせは03・5468・8846)では、「冷やしアイスクリームぜんざい 本日の煎茶セット」(写真、1404円)などが味わえる。正午~午後6時。(祝)を除く(月)(火)休み。

 24日(土)と25日(日)、原宿表参道ほかで原宿表参道元氣祭スーパーよさこいを開催。全国各地から集まった約110チーム6500人がよさこい踊りを披露する。問い合わせは事務局(3406・5572)。

(2019年8月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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