読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「盲目の人々」

ソフィ・カル 最後のとき/最初のとき(豊田市美術館)

 


美博ノート
©Sophie Calle/ADAGP,Paris,2015

 

 フランスの女性現代美術家ソフィ・カルが25年にわたって「見ることとは何か」を追究した三つの作品群が、リニューアルされた美術館の空間に合わせて展示されている。

 本作は、最初に制作された「盲目の人々」の一部だ。「あなたにとって美とは何か」というカルの質問にこの少年は、「緑は美しい」と答えた。草や木々など何かを好きになると、毎回それが緑色をしていると人から言われるからだという。

 23人の肖像写真と回答の文章、それに対してカルが用意した写真で構成されるこの作品に登場する彼らは、生まれながらに目が不自由にもかかわらず、ブロンドの髪、星、アラン・ドロンと具体的な美のイメージを語る。耳に入ってくる情報を自分の中で大切に抱いていたり、触覚から想像を膨らませたりする様子が伝わってくる。美は見える人にしかわからない、そんな偏見をカルは一蹴してみせるのだ。

(2015年10月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • あすか・夏 青々とした夏草の草原を、鳥の一群が渡る。

  • 青い白い鳥 岩倉壽と同年代で、高校、大学と教壇に立ちながら日本画の制作を続けた烏頭尾精(1932~)。

  • 蕪(かぶら)と茄子(なす) 戦後の京都画壇を代表する山口華楊(かよう)に学んだ日本画家、岩倉壽が亡くなる3年前に描いた本作。

  • 静日 淡い色調の画面を眺めていると、手前に花が、その奥に3羽の鳥が見えてくる。

新着コラム