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美博ノート

「多彩象嵌(ぞうがん)タイル」

タイルの幾何学 秩序と無限の模様
(INAXライブミュージアム)

 


美博ノート
19世紀 イギリス 約15センチ四方

 

 イスラム圏で装飾タイルに多用された幾何学模様は、やがて産業革命後のイギリスで新たなデザインに発展する。

 「19世紀末に流行したイスラム趣味とアールヌーボーが融合し、図形に植物の柄を組み合わせるようになりました」と主任学芸員の竹多格(たけだいたる)さんは話す。

 交差する円の中心に花のような図案が配された本作は、表面に別の色の粘土をはめ込んで焼く象嵌のタイル。植物の葉のような模様がみえるが、先端には魚の頭が。「植物と動物を曲線でつなげ、グロテスクと呼ばれる装飾様式の一種を表現しています」。タイル生産が工業化され、描線はシャープに。幾何学模様の美しさを際立たせた。

(2016年6月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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