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美博ノート

「鉄釉狛犬(てつゆうこまいぬ)一対」

まさるときつねとこま犬(土岐市美濃陶磁歴史館)

「鉄釉狛犬(てつゆうこまいぬ)一対」
笠原神明宮、1794年、多治見市指定文化財

 江戸時代を中心に、岐阜県東濃地方の神社に奉納された陶製の狛犬。本作の作者は山本冶良八宗和と刻銘されているが、土岐市妻木の陶工、山本半兵衛(?~1812)の作とされる。獅子頭(ししがしら)のような顔つきと胴体部分の模様が、半兵衛の狛犬に共通しているという。

 動物の犬の体つきに近い姿も特徴だ。学芸員の鍋内愛美(まなみ)さんは、「動物の体の構造をよく捉えていて、完成度が高い。山本の作品は多く残っていることから、当時の人気がうかがえる」と解説する。

 山本の狛犬は時代が下るにつれて大型化した。本作の高さは約66センチ。1801年に制作され、現在も同市の白山神社にある狛犬は高さ約1メートル、重さは推定120キロに及ぶ。

(2019年1月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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