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美博ノート

川村驥山の「狂草作品」

近現代の書 昭和・平成編
(春日井市道風記念館)

川村驥山の「狂草作品」
制作年不明

 平安時代の書の名人・小野道風(おののとうふう)が生まれたと伝わる愛知県春日井市。同市道風記念館が、所蔵する書作品から、昭和、平成の時代を代表する作家の作品を紹介する。

 1951年に書家として初めて日本芸術院賞を受賞した川村驥山(きざん、1882~1969)。極限まで文字を崩す草書の一つ「狂草体」で漢詩「詩人所賞是風姿 今朝伴吾清吟処」を書いた。ポンと打った点から始まり、流れるように書き進める。墨を継ぎ、大きく太い線で「今朝」を書いた後、太さを戻して一気に結ぶ。同館学芸員の鈴川宏美さんは、「一瞬一瞬判断しながら感性で書き上げています。意志と筆が一体となった名人の作です。『酔仏』という別号もあった驥山。この作品も酔って書いたのかもしれません。生き方も作風も自由な魅力に満ちていますね」と話す。

(2019年5月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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