五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
ヤマザキマザック美術館の創立者、故・山崎照幸氏は、画家の木村忠太(1917~87)を高く評価し、油彩の大作3点を購入した。75年の「セーヌ河畔」はそのうちのひとつだ。
会場で絵の前に立つと、鮮やかな赤に圧倒される。色も形も自由奔放。黒い描線はキャンバスからはみ出している。「70年代に入り、画家として軌道に乗った頃の作品です」と主任学芸員の吉村有子さんは話す。
木村の絵には必ず、建物や植物など、その風景を見たときに印象的だったものが描き込まれている。本作をじっと眺めていると、画面左の四角い枠の中に、セーヌ川や橋、河畔の建物が見えてくる。「赤は夕焼けの色でしょうか。左上がほの暗く、日が落ちつつあるのかも」と吉村さん。想像を膨らませるのが楽しい。