ぬいとり
開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。
ギョロリとした人の目を持つ花。目の周りを取り巻くのはまつげか、綿毛か、それとも光か。
フランス象徴主義を代表するオディロン・ルドン(1840~1916)による石版画集「起源」9枚のうちの一つ。制作はダーウィンの死の翌年で、人類の起源について議論を呼んだ「進化論」に想を得たのかもしれない。
モノクロながら幅広い階調が特徴の「ルドンの黒」を、学芸員の松岡未紗さんは「日本の水墨画のように様々な見せ方をしてくれる」と評する。
大正期以降の日本では、ルドンの版画が主に文芸雑誌でたびたび紹介された。「ルドンの白と黒による色彩表現が織りなす物語性は、日本人にも受け入れられやすかったのでしょう」と松岡さん。
科学技術の進歩が著しかった当時、それでも「目に見えないもの」への関心をルドンは持ち続けた。
目は繰り返し描いたモチーフでもある。