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美博ノート

「『起源』Ⅱ.おそらく花の中に最初の視覚が試みられた」

ルドンと日本(岐阜県美術館)

オディロン・ルドン 1883年
オディロン・ルドン 1883年

 ギョロリとした人の目を持つ花。目の周りを取り巻くのはまつげか、綿毛か、それとも光か。

 フランス象徴主義を代表するオディロン・ルドン(1840~1916)による石版画集「起源」9枚のうちの一つ。制作はダーウィンの死の翌年で、人類の起源について議論を呼んだ「進化論」に想を得たのかもしれない。

 モノクロながら幅広い階調が特徴の「ルドンの黒」を、学芸員の松岡未紗さんは「日本の水墨画のように様々な見せ方をしてくれる」と評する。

 大正期以降の日本では、ルドンの版画が主に文芸雑誌でたびたび紹介された。「ルドンの白と黒による色彩表現が織りなす物語性は、日本人にも受け入れられやすかったのでしょう」と松岡さん。

 科学技術の進歩が著しかった当時、それでも「目に見えないもの」への関心をルドンは持ち続けた。

 目は繰り返し描いたモチーフでもある。

(2020年7月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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