里見八犬伝
土井利位が雪の文様を意匠化。庶民にも広がっていった。
「面」と呼ばれる能面は、江戸時代初期までに85種類ほどが完成していた。「節木増」はシテ方の流派の一つ宝生流が独自に使用する面で、観世流の「若女」、金春・喜多流の「小面」、金剛流の「孫次郎」と同様に、若い女性の役に用いられる。
流派の家元などに伝えられ、それぞれの芸風を象徴する面を「本面」と呼ぶが、節木増の本面には、鼻の付け根の左側に影がある。用材の節のためともヤニが出たためとも伝わるが、これがかえって風情があるとされた。本作も同じ箇所にうっすらと影がみえる。
学芸員の社本沙也香さんは、「本作は、お歯黒に切れ長の目、口角の上がった口元と、作られた時代の美が表現されています。同じ節木増の面でも、微妙に印象が違います」と話す。同じく若い女性を表現した小面に比べると、節木増の方が全体的に大人びた印象だという。