読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

ひまわり

花咲く絵画 いのちのささやき(刈谷市美術館)

上原欽二 1960年
上原欽二 1960年

 花びらが落ち、茎がしなって、うなだれながらもなお地面に立つヒマワリ。作者の上原欽二(1915~2001)は、40代ごろから20年以上ヒマワリを描き続けたが、学芸員の古池幸代さんは「美しく咲いているヒマワリの作品はほとんどないのでは」と話す。

 愛知県岡崎市生まれの上原は、名古屋の中学などで教壇に立ちながら制作、戦後は画業に専念した。

 ヒマワリのたくましさや生命力に憧れて描き始めたが、咲き誇る盛りの頃よりも、枯れて種の重みにこうべを垂れる姿が面白く美しいと随筆にも書いている。「人間が老いていく姿にも似て、そこに人間的な表情を感じ取ったのでしょう」

 上原は自身の作品について「一点々々自画像であって、その自画像は私の日記帳の様なもの」と語った。ヒマワリを描き続けた画家はその後、琵琶湖へ通い、湖岸のアシを題材に連作を残した。

(2022年2月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム