上絵金彩綾棒踊(あやぼうおどり)図花瓶
山吹色から青色へ。本作品にも見られる鮮やかなグラデーションを得意としたのは明治時代に活躍した京都の窯元・九代帯山与兵衛(1856~1922)。技巧的な造形と華麗な色使いが、海外で高い評価を得た。
名古屋市緑区周辺で作られる有松絞りは江戸時代に始まり、尾張藩の特産品として盛んに生産された。種類の豊富さが特徴で、国の伝統的工芸品にも指定されている。
本作はその一技法「白影絞り」の木綿布で仕立てられた。通常の絞り染めでは糸で絞った部分が染まらずに白く残るが、白影絞りは縫い山だけが染まり地色は白い。亀甲模様を折り縫いで絞った布を棒に巻き付けて染色すると、棒と接した部分が防染されて模様が浮かび上がる。
有松絞りは型紙作り、下絵刷り、絞り・くくり、染色、糸抜き、湯のしなどの工程を分業する。最盛期には100種ほどもあった絞りは「一人一芸」。手間がかかり高度な技術が必要な白影絞りは現在は作られなくなってしまった。
本作は昭和20年代のもの。学芸員の岩間千秋さんは、「実用的な木綿地の絞り染めはなかなか残っていません。反物で入手できた大変貴重な資料です」と話す。