読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

紫地葵紋付葵の葉文辻ケ花染羽織

徳川美術館・名古屋市蓬左文庫「徳川家康 天下人への歩み」

16〜17世紀
 徳川家康、徳川吉通(尾張家4代)着用
 徳川美術館蔵 重要文化財(8月20日まで公開)

 徳川の家紋のモチーフでもあるフタバアオイの3色文様が紫地に映える。家康が着用し、没後に尾張・紀伊(当初は駿河)・水戸の御三家に分与された「駿府御分物(おわけもの)」の羽織だ。


 「大胆で華やか。おおらかな葉の表現、引き締まった葉柄の線などに染色技巧が駆使されている」と、徳川美術館学芸員の薄田大輔さんは説明する。


 生地の深紫色は、古来重宝された紫草(むらさき)を用いた紫根染め。尾張家に贈られた遺品のうち服飾類は当初、本作を含め4273件に及んだ。

「家康の服飾類は色、文様とも多様で好みを探るのは難しいが、紫色を好んだのかもしれない」と、薄田さん。同館には紫地を配した小袖や陣幕のほか、紫地の胴服2領を注文する書状も伝わる。


 「駿府御分物」や歴史史料を中心に家康の生涯をたどる本展では、放映中の大河ドラマに登場したカニ模様の浴衣も展示される。

 

※会期は9月18日まで。

 

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム