里見八犬伝
土井利位が雪の文様を意匠化。庶民にも広がっていった。
日本で初めて雪の結晶の観察図鑑を記したのは、江戸時代の殿さまだった。古河藩主で、幕府の老中首座も務めた土井利位(1789~1848)。約20年にわたる研究成果を「雪華図説」にまとめ、雪の結晶図86種を記録した。
利位は刈谷藩主の四男として生まれ、25歳で本家にあたる古河藩土井家の養子に。雪の観察は、利位の補佐役でのちに家老となった蘭学者・鷹見泉石の勧めで始めたとされる。オランダの科学書に触れるなどして興味を深めたという。
本作には雪の観察方法も記されている。黒い布の上に積もらせた雪をピンセットで取り出し、顕微鏡で観察したという。
本作を刊行した後にも、幕府の老中を務めながら、97種の結晶図を載せた続編も完成させた。「幕政に注力しながらもあくなき探究心を持っていたのだろう」と、刈谷市歴史博物館学芸員の長沢慎二さんは話す。