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美博ノート

牡丹燈記(ぼ・たん・とう・き)

大垣市守屋多々志美術館「描き残すべきこと 守屋が描く戦中・戦後」

1971年 紙本着色 二曲一隻屛風(びょうぶ) 大垣市守屋多々志美術館蔵

 「牡丹燈記」は中国・明代の怪異小説。幽霊の女に恋した男の物語で、三遊亭円朝の怪談噺(ばなし)「牡丹灯籠(どうろう)」の元にもなった。本作は、幽霊の女と侍女が男のもとに向かう場面。歴史上の人物や古典を多く手がけた日本画家の守屋多々志が、幻想的な情景に表した。

 藍と緑青を混ぜた色合いで、ハスが一面に広がる背景を描いている。灯籠を先頭に進む2人は、消え入りそうなほどの透明感だ。「統一された色調、この世のものとは思えない人物表現にも高い技術力を見て取れる」と、学芸員の上田朋子さんは話す。
 守屋は太平洋戦争中、海軍の戦史編纂(へんさん)のため中国で従軍した。訪れた各地でスケッチをしたり、市井の人々に現地の伝承を聞いたりしたが、戦後しばらくは中国の題材を描くことができなかったという。イタリア留学を経た1960年代後半になると、本作のように青色系の色調で中国の題材を多く描いた。

 

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