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美博ノート

王子装束ゑ(おうじしょうぞくえ)の木大晦日(きおおみそか)の狐火(きつねび)

三菱UFJ銀行 貨幣・浮世絵ミュージアム 「闇に光る 魅惑のビーム」 

歌川広重 竪大判 1857(安政4)年

 手前の木の根元の白い群れ。その右手にも無数の影。キツネだ。目を凝らすと、どの口元にも炎がゆらめいている。
 点々とともる野火を、人は狐火と呼んだ。「日没後の暗闇で瞬く正体不明の光は、キツネが口から吐き出す狐火などの妖火とされました。当時の人は、怪奇現象へのおそれをもののけの姿でユーモラスに捉えたのです」と、学芸員の鏡味千佳さん。
 江戸後期の東京都北区王子周辺は、今も残る王子稲荷神社以外に何もない場所だった。王子稲荷の近くにあったのが1本のエノキの木。大みそかには稲荷社の使いのキツネが東日本中から集まり、この木の下で装束を整え、王子稲荷へ参拝したという伝説がある。木の周りをぐるぐる飛ぶキツネもいて、その数が多いと翌年は豊作とされた。
 歌川広重の「名所江戸百景」の中で、この一枚だけが民話の世界を幻想的に描いている。

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