目利きのイチオシコレクション

ロマン主義【上】 栃木県立美術館

イギリス風景画の2大巨匠

ウィリアム・ターナー「風景・タンバリンをもつ女」(油彩・キャンバス、1840~50年ごろ)

ウィリアム・ターナー「風景・タンバリンをもつ女」(油彩・キャンバス、1840~50年ごろ)

  • ウィリアム・ターナー「風景・タンバリンをもつ女」(油彩・キャンバス、1840~50年ごろ)
  • ジョン・コンスタブル「デダムの谷」(油彩・キャンバス、1805~17年ごろ)

 18世紀後半から19世紀にかけて、ヨーロッパは産業革命を経て近代化が急速に進みました。市民が台頭し、個人の感情や想像力を重視するロマン主義が誕生します。芸術や文学など様々な分野にわたるため、定義は一概に言えませんが、絵画では、未知の世界への憧れをドラマチックに表現しているのが特徴です。

 栃木県立美術館は、18~19世紀の西洋風景画を豊富に所蔵しています。中でも、ロマン派でイギリス風景画の2大巨匠、ターナーとコンスタブルの作品が同時に見られるのは貴重ですね。

 まずはターナーの「風景・タンバリンをもつ女」。描線で輪郭を捉えず、内からにじむような色で光や大気を表現するのは晩年の傾向です。彼は旅好きでイタリアを愛し、本作は心の中の理想的なイタリアの風景とも考えられています。

 コンスタブルは対照的に、故郷イギリス東部など身近な風景を描き続けました。「デダムの谷」もその一つ。デッサンしながら涙するほど、自然に対して畏敬(いけい)の念を抱いていたようです。

 異国を夢見たターナーと、自然風景に崇高さを感じたコンスタブル。テーマは違えども、前者は距離的に遠く、後者は精神的に深く、「遠い世界」への憧れが共通するように思います。両作がロマン主義たるゆえんではないでしょうか。

(聞き手・星亜里紗)


 どんなコレクション?

 栃木県ゆかりの作家を中心に、日本と西欧の近現代美術の絵画や版画、工芸など約9千点を所蔵する栃木県立美術館。ロマン主義は、ターナーの水彩画やコンスタブルの版画集、ドラクロワの版画もある。益子で活動した陶芸家・濱田庄司がイギリスの生活文化をもとに提唱した「田舎の健康で自由な生活」をテーマに、イギリスの美術作品を収集。今回紹介した2作は、4月1日まで開催の「コレクション展示」で。

《栃木県立美術館》 宇都宮市桜4の2の7(TEL028・621・3566)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。250円、高・大学生120円。(月)((祝)の場合は翌日)休み。

京都精華大教授 島本浣

島本浣先生

 しまもと・かん 2006年から4年間、京都精華大の学長を務める。京都大大学院博士課程修了。専門は18~19世紀のフランス美術史。主な著書に「美術カタログ論 記録・記憶・言説」ほか。

(2018年1月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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