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ひとえきがたり

築地市場駅(東京都、都営地下鉄大江戸線)

移転目前 集う外国人観光客

空が明るみ始めた午前5時ごろ、買い付けのトラックが市場に次々と入っていく=東京都中央区築地5丁目
空が明るみ始めた午前5時ごろ、買い付けのトラックが市場に次々と入っていく=東京都中央区築地5丁目
空が明るみ始めた午前5時ごろ、買い付けのトラックが市場に次々と入っていく=東京都中央区築地5丁目

 午前7時ごろ。地下鉄の地上出入り口を、竹製の買い物かごを提げた飲食店関係者たちが行き来する。その脇で、案内板の地図に見入る2人組が。「パリにもすし屋はあるけど、ツキジにはかなわないわ」。友人と3年ぶりに来日したという仏人女性が声を弾ませた。

 築地市場は今年開場80年。かつては旧国鉄の貨物駅「東京市場駅」が隣接していたが1980年代に廃止された。2000年末の大江戸線全線開通によって市場の名を冠した駅が復活したが、築地市場は老朽化などに伴い来年11月7日、豊洲(東京都江東区)に移転する。

 それでも外国人観光客は増え続け、水産物の取扱量世界最大級を誇る築地の熱気は高まる一方だ。場内の人気すし店「寿司大」店長の漆原訓(さとし)さん(42)は「東日本大震災直後はほぼゼロだった外国のお客さんが、円安もあって今では全体の7割です」と客層の変化を話す。

 駅の券売機横には都営地下鉄のコンシェルジュが立つ。タブレット端末を手に、午前8時半から午後4時半まで乗り換えや観光の案内をする。担当の女性は「おいしいすし屋は」「マグロの競りはどうやって見るの」などの矢継ぎ早の質問に、当初は戸惑った。自信を持って答えられるよう、築地のすし店を巡り、早朝からマグロの競り見学にも参加した。

 市場移転を控え、駅は岐路に立つ。駅名変更の話題も持ち上がるが、詳細は明らかにされていない。

文 中村和歌菜撮影 横関一浩 

 沿線ぶらり  

 大江戸線は、都庁前駅(東京都新宿区)を起点、光が丘駅(練馬区)を終点とし、6の字形に走る40.7キロ。

 築地市場の隣には、江戸時代の大名庭園の面影を残す浜離宮恩賜(おんし)庭園(TEL03・3541・0200)が。25万平方メートルの敷地を有し、園内の花畑ではコスモスが見頃を迎えている。

 東京の街を見渡すなら、都庁前駅直結の東京都庁第一本庁舎にある、南北二つの展望室(TEL5320・7890)へ。地上45階、高さ202メートルからの眺めを無料で楽しめる。限定グッズを販売する土産物屋や、飲食店もある。

 

興味津々
魚がし横丁

 築地市場内には、卸・仲卸業者以外に飲食店など約120店が集う「魚がし横丁」があり、人気すし店には外国人観光客も多く並ぶ=写真

(2015年9月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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