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建モノがたり

原宿教会(東京都渋谷区)

神の神秘性 光や風に感じて

聖歌隊の活動に力を入れているため、天井のアーチ形は音響も配慮されている
聖歌隊の活動に力を入れているため、天井のアーチ形は音響も配慮されている
聖歌隊の活動に力を入れているため、天井のアーチ形は音響も配慮されている 毎週(水)正午から「ランチタイム・メディテーション」を開催。瞑想をする人やオルガンの演奏を聴く人が集まる

筆記体のアルファベットにも見える、リズミカルな線が印象的な外観。どうしてこんな形をしているの?

 外壁の外側から扉まで1・5メートル。「教会に入る、すなわち聖書という壮大なストーリーに入ることを、この厚みで表現した」とフランス人建築家アンリ・ゲイダンさん(57)は話す。

 100年以上の歴史を持つ原宿教会。礼拝堂などの老朽化が進み、設計コンペを実施した。ゲイダンさんは当時日本に在住、併設する幼稚園も手がけた実績があった。建築委員長を務めた岡本紘さん(78)は「斬新すぎて落選するだろう」と思いながらゲイダンさんの案に投票したところ、意外にも1位だったという。

 ファサード(正面)の三つのうねりは、キリスト教の三位一体を表現。その形状を引き継いだ礼拝堂の大空間は明るく、開放感がある。白い壁、白い天井。白い信徒席に点々と交じるオレンジや紫、黄色は、幼稚園舎にも使われている。外の色彩が花びらのように舞い込む。そんなイメージで風通しの良さを表現した。

 一般的な教会では高い位置に掲げられ建物の中心軸となる十字架は、入って左手に床から生えるように配置。十字架を「人に寄り添う存在」と考え、「光や風のように固定されない中心軸」を設定したという。

 ゲイダンさんは教会に必要な「荘重さ」も追求した。大きな窓や、天井にガラスをはめ込んだ五つのスリットからはふんだんに光が差し込む。「聖書には様々な光のメタファーが含まれる。光によって神の神秘性が感じられればと思いました」

 2008年に着任した牧師の石田透さん(67)は「ここでは普段と違った感じ方ができる。新たな出会いや発見が大切だと想起させる空間です」と話す。

(伊藤めぐみ、写真も)

 DATA

  設計:アンリ・ゲイダン

  階数:地上3階
  用途:教会
  完成:2005年11月

 《最寄り駅》 外苑前


建モノがたり

 徒歩約2分のカフェ香咲(問い合わせは03・3478・4281)は1984年創業。もともとはまかない食だった、銅板で焼くホットケーキ(780円)が看板メニュー。午前11時半~午後8時[(土)(日)(祝)は5時半まで]、(月)と1月11日まで休み。

(2021年1月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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