「現存12天守」の一つに数えられる丸岡城の眼下の観光情報センター。五角形の水盤はかつてのお堀を思い起こさせる。
「北陸唯一の現存天守」として知られる国指定重要文化財の丸岡城天守。城には全国的にも珍しい五角形の内堀があったが、明治維新後に徐々に埋められ、昔日の面影は薄い。
お城周遊の起点となる「丸岡城マチヨリマーケット」(愛称)は、内堀の水面だった場所にたつ。古地図を調べ遺構調査の上、遺構を傷つけない場所を選んだ。天守と白山連峰を結ぶ線上に位置し、周囲からも天守がよく見えるようにと平屋にして高さを抑えた。
城周辺を少しでも昔の形に戻そうと、坂井市の計画で、おもてなしの拠点として整備された。土産物店やカフェ、観光案内所のほか、江戸時代の城下町を再現したVR(仮想現実)映像の上映もしている。
目を引くのは、中央に広がる横幅27メートルのひと続きの大空間と、その上にかかる屋根のつくりだ。
屋根は、両側の高い壁から直径10センチの丸い鋼材を橋のように渡して支えられ、鋼材自身の重さによって中央がたわんで下がるように設計されている。鋼材は60センチ間隔で28本。地震のときに大きく揺れないよう上下で木材を斜めに組んで固定され、その上にステンレス鋼板で屋根が形づくられている。
福井市を拠点とする設計事務所とともに設計に当たった、全国で歴史をいかしたまちづくりや設計を実践する東京の設計事務所TITの富沢真二郎さんは「いろいろな人が集まれる大空間を作り、どこからでも天守が見えるように柱をなくし、そこに薄い屋根をぱっとかけたかった」。天井を見上げると、鋼材と木材が斜めに重なり、特産の越前織のように見えるという。
壁には特産の笏谷石(しゃくだにいし)が張られている。現存12天守の中で唯一、石瓦ぶきが残る丸岡城天守の屋根瓦にも使われた石だ。入手困難なため、家屋の解体などで出た笏谷石の再利用をした。薄く緑がかった石は雨などでぬれると青みが増して美しさが際立つという。
建物の外に出ると、天守との間には、かつての五角形の内堀を連想させるような水盤が広がる。「いつかお堀をよみがえらせたい」。そんな街の人々の願いを映すこの水面は、風のない日には丸岡城天守を静かに映し出すという。
(鈴木芳美、写真も)
|
DATA 設計:TIT+HYAKKA 《最寄り》:福井駅からバス |
![]()
徒歩約2分の「一筆啓上 日本一短い手紙の館」(☎0776・67・5100)は初代丸岡藩主本多成重ゆかりの手紙「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」にちなんだコンクールの作品を展示する。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。200円。丸岡城と共通で450円。