読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

堀尾実「斧」

みえるような、みえないような展(高浜市やきものの里かわら美術館)

1958年
1958年

 堀尾実(1910~73)は、日本画による抽象絵画を追求した画家。20世紀初めのフランスで起こった美術運動のキュービスムに影響を受けた。

 この作品は、55年に仲間と共に立ち上げた前衛的な日本画のグループ「匹亜会」で、活発に制作していた時期に描いた。「日本画の顔料特有の、つやのない落ち着いた黒色に、浮遊感のある、西洋的な曲線のオブジェ。それらが織りなす静と動が魅力的です」と、かわら美術館学芸員の今泉岳大さん。

 斧(おの)の持つ冷たさと、藍色が醸し出すぬくもりが同居した不思議な絵だ。まるで暗い森の中で斧がくつろいで遊んでいるように見えて、心が和んだ。

(2017年9月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分) 民藝運動の主導者、柳宗悦の唯一の内弟子。鍛えられた「直観力」とは。

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

新着コラム