五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
宮脇綾子(1905~95)はドクダミを愛し、繰り返し作品のモチーフに用いた。
葉脈や葉の質感を、かすりの模様を使って絶妙に表現している。根の形など、細かい部分の造形もリアルだ。植物の構造を図鑑などで調べ、実物を何度もスケッチするなど徹底的にモチーフと向き合っていたという。
彼女が一番好きだった布は藍染め。小さいはぎれもたんすに収めて、どこに何が入っているかすべて記憶していた。
会場には、さしみを取った後のカレイや、カボチャ、畑に植えられたネギなどの作品が並ぶ。彼女は、日々の暮らしに登場する食材などを題材に選んだ。「日常を、こんなにも魅力的にとらえていたのかと驚かされる。視点を変えれば、毎日が楽しくなると教えてくれているようです」と奥村綾乃学芸員。