本草図説
「本草図説」は195冊に及ぶ、江戸時代のカラー博物図鑑。市井の本草家・高木春山(?~1852)がただ一人で、20年以上かけて作成した。植物をはじめ魚、鳥、獣、虫、鉱物、自然現象にいたるまで万物を描いた精密な肉筆画に、見聞や書籍に基づいた解説が付く。
奈良・東大寺二月堂で毎年3月に営まれる修二会(お水取り)で、堂内を飾るツバキの造花。素材となる赤、黄、白色の和紙は、京都市で江戸時代から続く染色工房「染司(そめのつかさ)よしおか」が納めている。
花びらの濃い赤は、ベニバナから赤の色素のみを抽出、沈殿させて泥状にした「艶紅(つやべに)」。和紙60枚を染めるために、ベニバナ60㌔が必要という。花芯の黄色はクチナシの実から。いずれもハケで繰り返し塗り重ね、深い色に仕上げる。
「染司よしおか」は日本の伝統色の再現に取り組み、東大寺や薬師寺、石清水八幡宮など寺社の伝統行事にも関わる。4代目の吉岡常雄(1916~88)は古代染織を研究、5代目の吉岡幸雄(1946~2019)は化学染料を一切使用せず天然素材のみの染色に回帰した。本展では、工房に引き継がれる古来の色彩を紹介する。
※会期は11月5日まで。