韓国のソウル市内を流れる漢江を舞台に、謎の怪物グエムルが逃げ惑う人に次々襲いかかるモンスターパニック映画です。映像を作る上での演出とストーリーのエンターテインメント性がすばらしくて、僕の中で100点以上の作品。子供の頃に見ていた怪獣映画とは全然違う視点で作られていて、度肝を抜かれましたね。
主人公のカンドゥの娘、ヒョンソがグエムルに捕らわれたときは「ああもう助からない」と家族全員が絶望したけれど、携帯電話に娘から助けを求める電話がかかってきて「生きている」という希望に変わった。一回上げてまた落とされるシーンが多々あり、ジェットコースターに乗ったみたいにハラハラしっぱなしでした。
娘が生きていることを政府や軍隊は信じてくれないので、家族が一丸となって戦い、結果倒すんです。グエムルの大きさも興味深かったですね。大きいけれど家族4人なら「やっつけられるかも」っていうサイズ感。「倒せるの? どっちなの?」って見ているこちらはまたハラハラする。
最終的に、娘が助けた少年をカンドゥが引き取る。少年とテレビを見ながら食事をする風景は、本当の家族のようで胸を打たれました。ちゃんとした家族の物語だなって。僕も家族を持ったからそう思うのかもしれない。
映画のポスターにも使われているシーンで、娘の背後に迫るグエムルをピンぼけにした演出が好きで、赤ずきんちゃんとオオカミで表現しました。僕が作るとどうしてもかわいくなってしまうんです。
(聞き手・片山知愛)
(2023年3月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)