南果歩さん
祇をん 萬屋(よろづや) 「ねぎうどん」 京都に行くと必ず立ち寄る萬屋さんの定番、「ねぎうどん」。
祇をん 萬屋(よろづや) 「ねぎうどん」 京都に行くと必ず立ち寄る萬屋さんの定番、「ねぎうどん」。
44年前に入社し、配属されたのは営業部でした。営業部では毎月1回、取次店に請求書を届けるのが一番若い社員の役割でした。
昭和50年代、神田神保町の書店街は小さな取次店がいくつもあり、まずそれらへ請求書を届け、お茶の水の日販、江戸川橋のトーハン他にまわる順番でした。人が届けていた時代です。
その頃、揚子江菜館は「すずらん通り」をはさんで、今とは反対側にあり、戦前の上海のようなクラシックなたたずまいのイメージがありました。食通の作家池波正太郎さんが足を運んだことでも知られています。
春巻きやシューマイもいけるのですが、五色涼拌麺をいただきたい。元祖冷やし中華をうたう一皿。素材をいかした具材が富士山のイメージで盛りつけられ、甘酢ダレもこくがあり、涼感に食欲が誘われます。
2020年に亡くなった評論家、坪内祐三さんと書店をめぐり、この店で食卓を囲んだこともあります。
この5月に坪内さんの1056回の週刊文春連載をまとめた「文庫千趣」のお披露目の会もありました。妻で文芸ジャーナリストの佐久間文子さんによる6冊セット私家版の労作です。ゆかりの編集者二十数人が集い、しのびました。今の神保町書店街に坪内さんがいらしたら何というかな。
(聞き手・木元健二)
◆東京都千代田区神田神保町1の11の3(☎03・3291・0218)五色涼拌麺は通年メニューで、富士山の四季の彩りを具材であらわしている。1680円。午前11時半~午後10時。
いいくぼ・まさゆき 1959年生まれ。慶応大文学部卒。2023年から株式会社文藝春秋社長。週刊文春編集部勤務などを経て、文藝春秋編集長、ノンフィクション局長、専務取締役を歴任。