
佐世保の日本遺産、鎮守府と焼き物の里
長崎県北部にある佐世保の鎮守府と、焼き物の里を車でめぐってみました。
文・写真/土田ゆかり
富国強兵を進めた明治時代。佐世保は、1887(明治20)年には人口4千人の寒村だった。山に囲まれ、穏やかで入り組んだ湾に目をつけた明治政府は89(同22)年に旧海軍の鎮守府を置き、軍港として整備した。佐世保の人口は11年後の1900(同33)年に4万人を超えた。
鎮守府は、国内では佐世保をはじめ、横須賀、呉、舞鶴に置かれた。文化庁は2016年4月、歴史的・文化的な物語性をもつ文化財群として4カ所を日本遺産に認定した。今回は佐世保の構成文化財を見て回った。
佐世保港の最奥部にある佐世保重工業。1913(大正2)年に作られた大型クレーンが今も現役だ。船建造用のドックは、長さが400メートル(戦時中の佐世保海軍工廠時代は340メートル)ある。戦時中は第4ドックを筆頭に6基あり、軽巡洋艦、駆逐艦、潜水艦など88隻をつくった。旧海軍が最後に建造した巨大戦艦「武蔵」の艤装(ぎそう)工事もされた。
ここから南へ12キロ。佐世保湾と大村湾の間に浮かぶ針尾島(はりおじま)に高さ136メートルの鉄筋コンクリート造の無線塔3基が並ぶ。この針尾送信所は、22(大正11)年に完成した。41(昭和16)年、真珠湾攻撃を命じる大本営の電文「ニイタカヤマノボレ一二〇八」を中継し、送信したといわれる。現在は無線塔としての役割を終え、国の重要文化財として佐世保市が管理する。
送信所の東4キロにはハウステンボスがある。このさらに東2.5キロにある「無窮洞(むきゅうどう)」は、約600人の生徒が避難できた巨大防空壕(ごう)だ。幅5メートル、奥行き19メートルの主洞は授業を受けられるスペースがある。宮村国民学校の生徒たちにより、岩石をくりぬいて作られた。「朝から夕方まで掘りました」と案内してくれた阿波英一さん(83)は話す。
佐世保の市街地は、45(昭和20)年6月に、米軍の空襲を受けた。しかし、爆撃を免れ、残った建物もある。23(大正12)年建設の第1次世界大戦の鎮守府凱旋(がいせん)記念館(現・佐世保市民文化ホール)は、主に海軍の行事を催すために使われていた。れんがと鉄筋コンクリート造りで、柱や壁に施された装飾が美しい。
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戦後は海上自衛隊と在日米海軍が基地を構える。「佐世保バーガー」は、朝鮮特需にわいた50年ごろ、米軍基地から本場の味を教えてもらったことが発祥といわれている。地元の人にとって、夜の飲みのシメは佐世保バーガーだ。市内各所には店を紹介した地図も置かれている。佐世保発祥の料理として、夏場でも食べられるようにと考案された「レモンステーキ」も知られている。レモン風味の醤油(しょうゆ)ベースのソースが特徴だが、最後に残ったソースと肉汁にごはんを混ぜて食べるのがおすすめ。
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佐賀県の有田焼などと共に、磁器も2016年に日本遺産に認定された。佐世保市の「みかわち(三川内)焼」と隣接の波佐見町の「波佐見焼」だ。約400年前の豊臣秀吉の朝鮮出兵で、大名が連れ帰った朝鮮の陶工により始まったといわれる。
みかわち焼は、白磁(はくじ)に藍色の絵付けが特徴で、朝廷や大名向けに器を作っていた。窯元がある三川内山地区は、所々にれんが製の煙突が立ち、風情を感じられる。
波佐見は、山の斜面を利用した登り窯で、庶民を対象に大量生産をして、江戸・大坂に販路を広げた。全長約55メートルの畑ノ原窯跡では一部が復元されて、月に1度、窯焼きされている。
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鎮守府と磁器に関する遺構を巡り、戦争や文化の歴史に思いをはせた。とくに、磁器という身近な器類の歴史に触れ、やきものの世界に興味がわいた。同じ地域であっても、歴史的背景によって異なるやきものが作られ、現代にも受け継がれている。日本遺産に認定された他の所も訪ねたくなった。
「活いか料理専門店 一魚一会(いちぎょいちえ)」では、針尾送信所の3塔をモチーフにした「針尾丼」が食べられる。野菜の天ぷらのほか、穴子天3本が突き出した豪快な盛りつけで、ボリュームたっぷり。980円(みそ汁付き)。
長崎県佐世保市針尾東町2371の1、問い合わせは0956・20・2525。不定休。
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(2016年12月19日掲載。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は更新時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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