安田章大さん(アイドル)
「ペイ・フォワード 可能の王国」(2000年) 親愛なる他者のために「次に繫ぐ」
「ペイ・フォワード 可能の王国」(2000年) 親愛なる他者のために「次に繫ぐ」
子どもの頃から植物や虫が好き。「風の谷のナウシカ」で描かれる自然に心ひかれて、大人になっても繰り返し見ています。
特に魅力的なのが、腐海と呼ばれる菌類の森。荒廃した地球に広がり、命をおびやかすほど有毒な瘴気(しょうき)を発しています。「王蟲(オーム)」をはじめ巨大な蟲(むし)たちもすみついているので人々は恐れて近寄りませんが、腐海のほとりにある「風の谷」の族長の娘ナウシカは1人で森に降り立ちます。
王蟲の抜け殻を見つけて喜んだり、菌類の胞子が雪のように舞うなか寝転んだり。この冒頭シーンから、独特の世界観に引き込まれました。採取した胞子を城の一室に持ち帰って育てる場面も好き。秘密のラボのような場所にあこがれます。
ナウシカは強くて優しい。蟲たちと心を通わせ、王蟲の怒りを鎮めてしまう。帝国の争いに巻き込まれながらも、敵味方を問わず命を救おうとする。なかなかまねできる行動ではありませんが、本当に大切なものは何だろうと考えさせられます。
映画の中盤、腐海は汚染された地球を浄化する働きがあると明かされます。ナウシカにとって腐海はきっと幻想的で美しい森だろうと思い、イラストでは彼女の目に映る森をイメージしました。
私は普段、新聞の写真や広告などの部分を使った切り絵を制作しています。モチーフの多くは、親しみのある植物や虫です。このイラスト制作にあたって腐海の場面をじっくり見ると、菌類の造形がとてもすてき。もっともっと作り込みたいと思うほどワクワクする風景です。
(聞き手・木谷恵吏)
![]() 原作・脚本・監督=宮崎駿
声の出演=島本須美、納谷悟朗、松田洋治ほか
1982年静岡県生まれ。2007年、武井武雄記念日本童画大賞。絵本「ぼく ここにいるよ」「おおぐいタローいっちょくせん」(19年MOE創作絵本グランプリ受賞)も。
|