読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「インクスタンド」

華麗なるジャポニスム展
(名古屋ボストン美術館)

 


美博ノート
制作:ブシュロン社 
デザイン:ポール・ルグラン《インクスタンド》1876年
Photo ©2015 MFA, Boston.

 

 19世紀後半から20世紀初頭、日本の浮世絵や工芸品の構図、色彩、装飾模様は西洋美術に変革をもたらした。この動きがジャポニスムだ。

 今展では、米ボストン美術館の約150点で日本美術の西洋への影響を解き明かす。歌川広重の浮世絵の隣に印象派を代表するモネの絵画を配するなど、展示を工夫した。

 本作はフランス宝飾界の老舗ブシュロン社が制作。七宝の技法を用いて、日本の文様を微細に表現した。蝶(ちょう)や昆虫や狛犬(こまいぬ)、亀……。小杯に描かれた富士山を望む風景と釣り人は葛飾北斎の「冨嶽三十六景 武州千住」のモチーフに酷似している。

 「古(いにしえ)から日本人は自然美に心を寄せてきました」と学芸員の鏡味(かがみ)千佳さん。日本の感性に西洋人は驚嘆し、日本独特のモチーフや自然観などを作品に取り入れていった。

(2015年4月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分) 民藝運動の主導者、柳宗悦の唯一の内弟子。鍛えられた「直観力」とは。

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

新着コラム