読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

ロレンツォ・ロット「聖母子と聖ヒエロニムス、トレンティーノの聖ニコラウス」

ヴェネツィア展(名古屋ボストン美術館)

 


美博ノート
1523-24年 油彩 ボストン美術館
Charles Potter Kling Fund 60.154 Photo ©2015 MFA, Boston

 

 水の都、イタリア・ベネチア。その美しい景観は芸術家を引き寄せ、多くの作品が生み出された。本展では、ベネチアにまつわる米ボストン美術館所蔵の130点が並ぶ。

 この作品はベネチア・ルネサンスを代表する画家、ロットが個人のために描いた。赤ん坊のイエス・キリストを聖母マリアが抱いているが、イエスの足元にあるのは子供用の棺おけ。背中越しの聖ヒエロニムスはイエスの将来を悲しみ、涙を流している。こちらまで悲しくなるような豊かな表情の表現は、ロットが得意としていたものだ。

 西暦1500年前後のベネチアで、カンバスに油絵の具で描く技法が生まれた。ロットは油絵で描いた初期の画家だが、やわらかなイエスの髪の毛やマリアの鮮やかな衣装など、技法の利点を大いにいかしている。

(2015年11月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分) 民藝運動の主導者、柳宗悦の唯一の内弟子。鍛えられた「直観力」とは。

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

新着コラム