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美博ノート

「樹海 #1609」

現代ガラスの表現展 Vol.3(大一美術館)

「樹海 #1609」
2016年

 アメーバ、サボテン、深海生物……。いや、もっとえたいの知れない何物か。吹きガラスで制作された高さ88センチのオブジェだ。

 「溶けたガラスは、火の中で踊る生き物のよう。なまめかしく、とどまることがない」。そう話すのは、ガラス作家の佐々木雅浩。転成や臨界といったテーマで制作を続ける。溶解炉の中でガラスが見せる、有機的な表情を捉えたいという。

 本作は、1日がかりで冷やした後、表面を部分的に削り、「より妖艶(ようえん)に見えるよう」、プラチナ液で光沢を出した。

 作品名には、「生と死を包み込む森」の意を込めた。「ガラスが、僕を通して作品という別のものに姿を変える。いったん消滅して生まれ変わる命のようで、面白い」

(2017年4月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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