読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

沼 祐一「ひと(赤い顔の少年)」

山下清とその仲間たちの作品展(瀬戸市美術館)

貼絵 1940年
貼絵 1940年

 知的障害のある子どもたちの一人ひとりの特性を見つめ、能力を養う八幡学園。その教育指導の一環に、図工の科目があった。早稲田大学心理学教室の戸川行男教授は、園児の才能あふれる作品に着目し、1938年に同大大隈講堂で作品展を開催。画壇の重鎮だった安井曽太郎らの称賛を浴びた。

 本作は、重度の障害を持つ沼祐一(1925~43)、15歳の時の作品。入園時は、話すことができず、性質も粗野だったことから、誰もが絵を描けることなど想像しなかったという。だが、沼が描き出す原始美術の風格漂う独創的なキャラクターや鮮やかな色使いは、多くの人々の心を引き付けた。

 「ある意味では清君以上のその何倍かも不可思議であり、奇跡的である」と、戸川は述べている。

(2017年10月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分) 民藝運動の主導者、柳宗悦の唯一の内弟子。鍛えられた「直観力」とは。

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

新着コラム