読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「鮭」

日常を綴る 宮脇綾子展(清須市はるひ美術館)

「鮭」
1977年

 主婦として3人の子を育てながら、身の回りの古布でアップリケ作品を制作した宮脇綾子(1905~95)。本展では、昨年遺族から同館に寄贈された15作品を含む約50点と資料で、彼女の初期から晩年までをたどる。

 藍染めの布で作られた、1本の新巻鮭(あらまきざけ)。よく見ると、エラやヒレ、腹の部分などで細かく布を変えているのがわかる。にぶく光る瞳は、金糸が入った布で表現した。造形の緻密(ちみつ)さに対して、どこかかわいらしい。「綾子さんは見逃してしまいがちなモチーフの魅力を見つけるのが上手。愛情を持って見つめていたからでしょう」と奥村綾乃学芸員。

 彼女は新巻鮭を何度もモチーフにした。「かつて新巻鮭は年末年始の風物詩でした。1年を迎える節目に制作して、心を新たにしていたそうです」

(2017年11月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分) 民藝運動の主導者、柳宗悦の唯一の内弟子。鍛えられた「直観力」とは。

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

新着コラム