五十三次 府中
日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか
紀元前から幾多の文明が栄え滅んできた中南米。本展では、インカやマヤを中心に土器や織物など約80点を展示し、古代中南米の文明の変遷をたどる。
紀元前後から16世紀ごろまで中米で栄えたのが、マヤ文明だ。使われた土器は円筒型が多く、装飾が施されたものは貴族が使っていた。本作は背面にマヤ文字で「カカオ」と書かれており、儀式の際に王がカカオ飲料を飲むための器だった。カカオは通貨として使われ、神に奉納もされる神聖なものだった。
描かれた人物の頭には緑色の羽根があしらわれている。当時、世界の中心の色は緑色とされ、王の飾りにはヒスイなども珍重された。「マヤ文明の栄えたグアテマラや日本の新潟県などでは古来硬玉ヒスイが見つかった。日本でも縄文時代に緑のヒスイが好まれるなど、両者には共通点がある」と学芸員の松本庸子さん。