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美博ノート

チャック・クロース「自画像」

「美術する身体」展(名古屋ボストン美術館)

 


美博ノート
「自画像」
Photo©2014MFA,Boston
© Chuck Close,courtesy Pace Gallery

 

 写真を忠実に再現する「フォトリアリズム」。本作は第一人者チャック・クロースが1968年に描いた素描の自画像だ。

 制作方法を知ると気が遠くなる。まず自分の顔を撮影し、その写真にマス目をひく。次にキャンバスに同数のマス目をひき鉛筆で1マスずつ模写する。光の反射やピントのずれまで写しとり、まるで写真そのもの。

 当時のアメリカはポップアート全盛期。見たまま描く絵は古くさい、と初めは嘲笑された。

 だが、主義主張や感情を交えず、写真を機械的になぞる手法はポップアートやコンセプチュアルアート(概念芸術)の理念と似通う、と同館学芸員。クロースは、「人は何をもってその人物と見なすのか」という認識に興味があるという。今も様々な手法で人の顔を描いている。

(2014年11月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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