読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

野村直城「ULTRA KUMAPON」

世界とつながる本当の方法(岐阜県現代陶芸美術館)

 


美博ノート
野村直城「ULTRA KUMAPON」

 

 見た瞬間に、見る人の五感をくすぐる――そんな陶芸作品を集めた企画展が開催中だ。出品作家25人による、実に多様な造形の作品計86点が並ぶ。

 展示室でひときわ目をひく本作は、黄金色に輝くクマのオブジェだ。幅65×奥行き65×高さ90センチの大きさに圧倒される。一方で、その表情は口角をあげたような笑顔。抱きつきたくなる衝動にかられる。

 クマの顔と体はぷっくり盛り上がる点で埋め尽くされている。作家が筆でひとつひとつ透明の釉薬(ゆうやく)を落として施した。無数の点々に鑑賞者の姿が映り込む。学芸員の山口敦子さんは「作品を鑑賞しているようで、逆に自分を見透かされているような気持ちになる」とみる。愛らしさの裏にちょっぴり不気味さを秘めたクマだ。

(2015年1月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分) 民藝運動の主導者、柳宗悦の唯一の内弟子。鍛えられた「直観力」とは。

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

新着コラム